奈良の大地に根を張る星鋼京は帝國の姫を娶り、その寵愛を一身に受ける”悲劇王”セタ・ロスティフンケ・フシミの治める藩国である。
 中央政庁のある場所は国営鉄道の中心部であり、そこに国外路線を拡張することにより大規模な総合駅となっているのである。勿論外とつながるということは当然リスクも大きい。鉄道警察及び治安の要たる警察署が近隣に配置されてるのは当然のことだった。

 そんな政庁駅に青年は降り立つ。

 星鋼京 ―Kaptal Des Meteorit―

 幾重にも折り重なる線路の軌跡をなぞっていくとこの政庁駅へと辿り着く。モノクロームの似合うこの街には幾度ともなく戦災により移転され、その度に改良を重ねられた形跡が残っているのだろう。

「出口はどこだー!!」
 誰もが一度は口にする言葉を青年もまた口にする。あまりにも巨大すぎるがゆえにこの駅は出口へのルートがわかりにくいのである。やっとたどり着いた政庁の窓口ではお決まりの言葉が飛び交う。
「星鋼京へようこそ。本日もよき星の巡りで。」
 にっこりと笑って対応してくれる女性職員。武術留学の話を切り出すと、奥に通された。
 そこには北国人らしい大柄な初老の男性が座って待っている。青年に気づくと立ち上がって握手を求めてきた。
「ああ、話は聞いておりますよ。ただ、我が国はご覧の通り機械と経済の国。あなたの国が求めるようなものがあるかどうかはわかりません。」
 頭を振って残念そうに告げると、いくつかの紹介状を渡される。

 一つは古くからの星見の延長上にあるもの達の住まう場所。
 もう一つは、最も新しき近衛兵の育成が行われている場所。

 古きも新しきも共に歩むこの国の一端を垣間見た気がした。





 冬の京、伏見藩国、奇眼藩国、星鋼京。
 この国の歩んできた歴史である。転封されては奈良の地へ根を下ろしたこの国には帝族が座す。当然ながらそれだけの重要性を誇るということはそれを守るための兵も必要とされる。
 それ故に防衛のための戦力はまた一般に戦場で要求される能力と違ったものがある。ここにも暁が見習うべきものがあるのだろう。

 そして、古きを温ねてみれば、精霊とともにある彼らの元へたどり着くだろう。かれらの持つ深い知識はとてもためになるに違いない。