よんた藩国といえば言わずと知れた暁の円卓の長年のパートナーである。
あるときは犬の神様によってその背に暁の円卓の戦士を乗せ、またある時は遥かレムーリアまで資源採掘にともに出かけるといった具合だ。

青年の旅もすでに十を周り、様々な体験をしてきていた。この国では何が学べるのだろうか。

春近くても北国の夜は身に染みる。青年は寝過ごして乗り遅れた自分を呪いながら最終の列車よりよんた藩国に降り立った。 歩いて寝静まった街を歩く。

こんな夜は――

そう。老犬は夜を守るのだ。さすがに青年も巨大な犬が駆け抜ける様を目の当たりにすると、信じるしかなかった。
老犬が降り立った家では悪夢が子供を苛んでいる。輝く瞳でのしかかる悪夢を睨み付けるとその牙でやすやすと噛み裂いた。
そして、ペロリとその涙を浮かべる子供の頬を舐めると、その家から出るのだ。

出てくる際に再び青年と出会う。

「一夜に二回も同じ人間に出会うとは。ワシも衰えたかのう。」
そして、久しぶりに人族と話すのもよかろうと老犬は道に降り立った。
「こんばんは、僕は暁の円卓よりきました。」





 よんた藩国は常に犬とともにあった。そして、長きに渡って暁の円卓藩国と聨合を結び、よきパートナーとして歩んできた国である。犬の神様に乗って暁の円卓の騎士が出撃したこともある。レムーリアへ採掘へともにいったこともある。古い付き合いの国だった。
 この国の特徴は犬系の豊富さとともに強力な偵察系にある。偵察系の国はそれほど多くないため、その教えを受けることはきっと暁の円卓にとってもプラスに働くに違いない。