旅の始まりは土場藩国と暁の円卓との境にある帝國環状線の駅であった。はじめて乗る環状線は勝手がわからず、ただ往生するばかり。

「暁の円卓の人かね?」

立ち尽くす青年に鋭い雰囲気を持つ老人、いや老犬が声をかけてきた。

「あ、はい。」
青年が頭を掻きながら正直に答えると一瞬険しい表情を浮かべたが、続けて小声で警告を発した。  

「ここは人通りが多すぎる。物取りに会いたくなければ、そのはみ出してるものをきちんとしまうんだな。」

 妙に説得力のある声でそう言って立ち去ろうとする老犬に青年は礼を述べるとその場で懐からはみ出していた物入れを直し、立ち去ろうとした。

 ……が、青年は気付いた。その歩き方はかつて戦場いた兵にしかできないものであった。今でこそ経済大国であり、同時に治安の悪い国ではあるが、かつて大転換を図って以後は犬の色が強い国家であった。彼らは主にメッセンジャーとして活躍したが白兵戦力としても侮れないものがあったのである。その頃の歴戦の勇士となれば、得るものも大きいだろう。

「待ってください、僕に戦い方を教えてもらえませんか?」
 ふん、と鼻で笑うと、犬歯を剥き出しにしてこういった。

「面白いことを言うの、暁の。この老いぼれに何を言っている。」
「しかし、その足の運びはただのご老人だとは思えません。」
 もう一度ふん、と鼻を鳴らすと目を細めてこう言った。
「ワシがかつて戦場に出ていたことがわかるのか。」
そして、最初の修行の日々が始まった。




 大別して土場藩国で言う超犬の戦い方は、二種類ある。古くは戦場を縦横無尽に駆け巡り、低物理域での情報伝達を旨としたオペレーターとしての戦い方。もう一つは騎乗で背中に乗せながら戦う騎乗戦闘技術。後者のほうは長く聨合国として付き合ってきたよんた藩国でなじみが深いだろう。
  今ではほぼ個人が国の編成とされているため、あまり見ることはないが、PPGで活躍する”空とび先生”の方にもその血は受け継がれている。
  彼らの持っている技術は乗られる側としての動きがメインとなるだろう。これは後に騎乗した時に役立つことになると思われる。