未来的な装いの看板に翻弄されつつも、なんとか環状線に乗り込み青年は旅を続ける。何度か掏られそうになりはしたものの、老犬のアドバイスが効いているのかなんとかそういった被害にあうことはなかった。心の中で再度感謝する。

「たけきの藩国か。あそこに行ったら、この紙に書いてある住所を尋ねるがいい。ワシができるのはここまでじゃ。」
 出る前に渡された封筒には地図と手紙が入っていたのである。

 流れ行く景色は初めは珍しかったがだんだんと、代わり映えがなくなり、ついには物思いにふけるようになっていた。こんな時に彼女が隣にいてくれたら、なんて詮無きことを想ってもかなうわけもなかった。ただ、首に下げていたお守りを眺めると、彼女のことが思い浮かべられる。それは青年の心の支えの一つであった。


 列車が減速しながらホームに入り、そして停車する。たけきの中央駅はあいかわらずの盛況であり、駅の売店にはたけきのうぉーかーが並べてある。同じ低物理域対応している国にもかかわらず、駅の周りには舗装された道路があり自動車も走っている。
 その一方で昔ながらの馬車があったり、するのだが、青年にはそのどれもが珍しいものばかりであった。

 手紙にあった地図を見つつ歩いていると美味しそうな匂いが漂ってきた。どうやらこのあたりは官庁社御用達の食堂街のようだ。
「お兄さんちょっとよっていかない?」
 などといった声が歩いてるとかかってくる。
 ふらふらと一軒の食堂に入って今日の食事とすることとした。




 たけきの藩国。ここは帝國でも有数の安定した国家の一つであり、暁の円卓と同じく低物理域での白兵戦闘を主体とした数少ない国家でもあった。ただし、彼らの得意とするのは暁とは違い、無手での戦闘を主体とする拳法家の系譜と、騎馬に乗り戦場を駆け抜ける聖騎士の系譜である。実はこれだけではなく、世界貴族、つまり世界忍者系譜に連なる、上流階級や忍者の戦闘法などもここから学ぶことができると考えられる。